博士進学する?しない?博士号取得のメリット・デメリットを化学メーカー研究職勤務の博士が解説!

どうも、Dr.御餅月です!
本日は化学メーカーで研究職として勤務する私が、実際に博士課程に進学してみて実感した博士課程進学のメリット・デメリットを解説していきたいと思います。
【前提】
筆者の大学での所属は以下の通り。
修士課程と博士課程で所属研究室を変更しています。
ここで出会ったA教授と研究をしたくて、A研究室に所属
日本だと有機化学、世界だと無機化学に分類されるような境界分野
A教授がこの大学に栄転するため、修士課程になるタイミングで受験し入学
無事、A教授と一緒に旧帝大への移動が叶う
修士課程在学時にやりたい研究を見つけ、B研究室へ移動
有機化学分野
3年間で卒業要件を満たし卒業
- 博士進学をするか、しないか悩んでいる修士学生
- 社会人ドクターや、大学院に戻ろうとしている社会人
結論
博士号とは?

博士号は世の中で取得できる学位の最高位であり、その分野で専門的な研究活動をおこなう能力を有している、という証明です。一方で、日本ではその人数が非常に少なく実態はあまりよく知られていません。文部科学省が公表している科学技術指標2023によると、2022年度の中学生・高校生はそれぞれ300万人いるのに対して、在学期間が同じ3年間の博士課程の学生は7.5万人と非常に少ないことがわかります。
また、国民100万人あたりの博士号取得者の人数を見てみましょう。日本の2020年の博士号取得者は123人/国民100万人と0.012%となります。

学校教育における学生・生徒等の現状(2022年度)

交通事故にあう確率(0.24%)よりも博士取得者に会う確率のほうが低いよ!!(参考:警視庁)
そんな、博士課程ですが進学し学位を取得するとどんなメリットとデメリットがあるのか見ていきましょう。
博士進学のメリット・デメリットとは?

メリット1 | 研究活動に全振りできる
何といっても博士進学のメリットの第一に挙げられるのは、研究活動に専念できることではないでしょうか。むしろ研究活動をおこなっていないと怒られます。研究室のスタッフや大学職員も研究活動を優先する雰囲気なので、おのずと研究活動にどっぷりと浸かることができます。

こんなに研究活動ができる場所は他に存在しないと思うよ!
メリット2 | 修士課程との差別化ができる
修士号の取得者数と比較して博士号取得者の人数は非常に少ないので、修士号と差別化が可能です。就職活動時、面接会場では多数の修士学生が会場を埋めているのに対して、会場で博士学生に出会うことはなかなか無いです。それくらい希少価値が高い存在です。ただし、それ相応の研究活動内容が求められます。

化学メーカーに勤務していて、修士卒の同期が25人くらいいるけど博士は自分1人だよ!
それなりに頼られる存在になっているよ!
メリット3 | メンタルが強くなる
研究の酸いも甘いも経験することになるのでメンタルが強くなります。研究活動の主導権を持ちながら日々研究をし、学問に対して言い訳できない状態で活動をおこないます。薄っすらプレッシャーを感じることもありますが、乗り越えた暁(あかつき)には精神的に強くなります。

博士課程は伊達じゃないよ!!
デメリット1 | 学位取得時の年齢はストレートでも27歳
同年代と比較して社会にでるのが遅くなります。当たり前といえば当たり前ですが、専門性を身に着けるのには時間がかかります。浪人、留年をしていないストレートの場合であっても卒業時は27歳です。民間企業に入社時は同学年の学部卒はすでに入社6年目なので、社会人スタートが遅れることになります。

入社時に同期の高卒(18歳)と研修を受けて、一緒に社会人をスタートさせたのはいい思い出だよ!
最低でも9歳は離れた同期がいるよ!!
デメリット2 | 経済的な対策が必須
大学入学から博士課程卒業までストレートでも9年間です。私立、公立、国立大学で差はあれど、学費と生活費はトータルで数百~一千万円強かかります。よほど事情ない限り、何かしらの対策は必須です。経済的な対策としてアルバイトや奨学金がありますが、博士課程ではアルバイトをする時間的余裕はないと思うので奨学金が有力な選択肢となります。貸与型奨学金の場合は返済する必要があります。

国立でも授業料は約50万円/年かかるよ。
生活費10万円/月だとしてもトータルで170万円/年必要だよ。
よっぽど地方の大学で家賃が安くない限り生活費10万円/月は厳しいと思うよ!
デメリット3 | 博士号取得難度が高い
博士課程には大学の各専攻が定める卒業要件があり、これを満たさないと学位が授与されません。最高学位であるため博士号は取得難度が高いです。卒業要件は所属によって様々ですが例えば、「国際論文ジャーナルに筆頭著者として論文がXX報以上掲載されること」、「国内学会における口頭発表○○件以上、かつ国際学会におけるポスターもしくは口頭発表△△件以上」などいろいろな要件が複合して課されています。卒業要件を満たせなければ卒業できません。

博士が博士たる所以(ゆえん)がここにあるよ!!
まとめ
今回は博士課程進学のメリット・デメリットについて解説しました。修士課程卒業後にさらに博士課程に進学することは時間的にも経済的にも考えなければならないことがたくさんあります。そのうえで、納得して研究活動をおこなうことができれば何よりだと思います。